ランニングを定期的に行っている方ならLSD(long slow distance)という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?昔からあるトレーニングのため、やったことある方も多いと思いますが、その効果について改めて考え、ロングジョグとの違い、効果、狙いについて「ゆっくり走れば速くなる」やその他の方の意見を比較しながら考察していきたいと思います。この記事を読めば、「ゆっくり走れば速くなる」の書籍に記載のあるLSDの考え方、効果を知ることが出来ます。またこれからLSDを取り入れることを考えている人が、LSD不要論を唱えている方のその根拠と比較することが出来、自身の練習計画の助けになるかと思います。
LSDとはどのように行うトレーニングなのか?
LSDはゆっくり長く走るトレーニングであり、ロングジョグのペースよりは遅く、時間を基準にして長時間走るトレーニングです。ペースの目安としては7~8分/km程度、ロングジョグは5~6分程度が目安になるかと思います。LSDの時間としては90分程度以上が推奨されております。
LSDの目的は?
LSDの目的は一体なんでしょうか?LSDの原点ともいわれている、故佐々木 功さんの書籍「ゆっくり走れば速くなる」ではこう言及されております。
LSDという一つのことが多くの意味合いを持ち、一つのことが同時に複数の効果を持ち、やり方を変えることにより多面的な要素を持たせることができるのです
これはLSDに特定の目的があるというよりは、自分の目的に合わせてLSDというやり方を変えることが出来ると捉えられる思います。そのためLSDの目的というものは明確に存在せず、自分が設定した目的に対する手段として考えていくべきでしょう。
LSDの効果とは?
故佐々木 功さんの書籍「ゆっくり走れば速くなる」で上げているLSDの効果を上げると
- 末梢毛細血管の増大という身体資源の開発
- グリコーゲンの枯渇状態を引き起こすことによる持久的能力の開発
- 故障からのリハビリ
- 正しいフォームの養成
- 酸素の十分な筋肉への供給による随意的運動の開発
上記を上げております。
末梢毛細血管の増大という身体資源の開発
一言でいえば目に見えないくらい細い血管が増えるということです。毛細血管が増加すればそれだけ酸素を運搬することにつながるので持久力アップといえるでしょう。
グリコーゲンの枯渇状態を引き起こすことによる持久的能力の開発
グリコーゲンの枯渇状態を引き起こすことで持久的能力の開発を狙うためにLSDをしましょうというのは私には理解できません。体内のグリコーゲンの枯渇を狙いたいなら、ペースは閾値程度以上出力させるべきでしょう。この意見に関しては、私は反対の立場をとります。
故障からのリハビリ
故障中、あるいは故障後の練習としては、極力低負荷なものを選択すべきだと思うので、こちらはその通りだと思います。ただ長時間ランニングを行うべきかどうかということについてはやや疑問が残ります。
正しいフォームの養成
一体正しいフォームとはなんでしょうか?私は正しいフォームとは、”レースで最もタイムが出せる効率的な走動作”だと思いますが、LSDは正しいフォームといえるでしょうか?少なくともレースで求められる走る速度とはかけ離れた動作になっているかと思いますので、正しいフォームとは言えないのではないでしょうか?
酸素の十分な筋肉への供給による随意的運動の開発
これは言っている意味が難しいですね。「随意的」というのは自分の意志で動かせるという意味ですので、酸素の供給が十分にある条件下にて、自分の意志のままに(無理な動作なく)走ることが可能になるという意味あいでしょうか。正しいフォームの養成といっていることと少し重複しているような気がします。
その他LSDの効果
そのほかのLSDの効果は、脂肪燃焼をしやすい体にするということです。こちらもよく言われていることではありますが、私個人としては、LSDをやる効果としては、この効果が一番大きいと感じています。
LSD不要論を唱える方々の主張
一方世の中には、LSD不要を唱える人々が一定数おりますが、その方達の主張は、おおよそ以下2点に集約されます。
- 長時間、低負荷をかけ続けなくても同じ効果を得ることが出来る。
- 負荷が小さくて生理学的反応に乏しい
佐々木氏が言及している効果の中で最も理にかなっているのは、おそらく抹梢毛細血管の増大でしょう。抹消毛細血管の増大によってミトコンドリア量が増えて、酸素運搬能力が高まり、持久力アップするというものです。LSD不要論を主張する方々の意見(環太平洋大学体育学部教授の意見)では、閾値走やインターバル走で同様の効果を補うことができるというものです。
LSDは結局必要なのかどうか?
私はLSDは不要だと考えております。限られた時間の中で継続的に行うべき練習としては、不要であるという立場です。ランニングである以上、一定の効果はあると思いますが、問題は時間VS効果です。
LSDでは一般的に90分以上のランニングが推奨されておりますが、6~8kmの閾値走の練習では、せいぜい30分程度の時間で済みます。LSDの効果とは?で解説させていただいたように、一部の効果は、効果として怪しいので積極的に取り組む練習ではないのかなと思います。
LSDをやるとしたら
とはいえランナーの中には、今までLSDでタイムが伸びてきた!そんな方もいると思います。ランニングしている以上効果が何もないわけではないでしょう。もしLSDを実施するならどう行うのが良いのか?その考察について記載させていただきます。LSDを効果的に行う上で考えておきたいポイントは、”脂肪燃焼優位な速度”で実施することです。多くのランナーがLSDを取り入れるのは、フルマラソン後半のグリコーゲン枯渇を防ぐために、エネルギー源を脂肪燃焼から発生させるようにする、つまり脂肪燃焼優位な体質に改善するためですよね?「後半の失速なんてもうしない!30kmの壁を克服するためのフルマラソントレーニング理論」も合わせてご覧いただければと思います。
脂肪燃焼優位な体質に改善するためにLSDを選ぶのであれば、脂肪が燃焼しやすい体質にするための効果を上げる方法についてお伝えいたします。脂肪が燃焼しやすい体質にするために気を付けたいポイントは
- 極力朝に走る
- 速度は遅め
- 時間は120分程度
- 走りはじめにダッシュしてから実施
速度と時間についてはすでに言及しているので、「極力朝に走る」と「走りはじめにダッシュしてから実施」について解説いたします。
極力朝に走る
一日のうち最も糖質が少ないのが、朝ごはんを食べる前です。最後に取った食事から最も時間が経過しているからです。「座っていただけの1日」「朝食前に運動」「昼食後に運動」「夕食後に運動」脂肪の消費エネルギー値が、増加していたのは「朝食前に運動」のみであるという研究結果があります。(参考「ランナーズの特集記事」)
走りはじめにダッシュしてから実施
これは乳酸を出すと身体の中で脂肪を分解するスイッチが入り遊離脂肪酸をエネルギーにしやすくなるという仕組みを利用した方法です。ランナーズの特集記事では、3つのケース①「1kmウォーミングアップ後にマラソンより遅いペースで15km走る」②「ウォーミングアップ後に1.5km走全力走を行い、その後13.5kmをマラソンより遅いペースで走る」③「ウォーミングアップ後に200mダッシュx5本を行い、その後14kmをマラソンより遅いペースで走る」の走り方が比較されており、②、③のケースで、脂肪利用割合が高かったという結果です。②と③は②のほうが高い結果ではあるのですが、個人的には③のケースをお勧めしています。理由は2つで、1500m全力走はやるハードルが高い、②③の結果はさほどかわらないからです。そのため私としては、最初に200前後の距離を9割程度の速度で4~5本走ってからLSD実施するのが最も効果的だという理解です。
参考文献ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・ゆっくり走れば速くなる
・ランナーズ3月号
・ロングスローディスタンス(LSD)の効果。ランニングトレーニング・初心者も上級者も。
参考文献ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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