この記事ではレペティショントレーニングの効果を知りたい人、レペティショントレーニングの目的・効果についてダニエルズフォーミュラに記載された内容をまとめ、プラスアルファーとしてどのようにレペティショントレーニングを行うと効果的なのかについて解説していきます。以前に記載したレペティショントレーニングの最新版という位置づけですが、過去記事についても読みたいという方はこちらの記事を参照ください。
レペティショントレーニングとは?
レペティショントレーニングとは全力に近いスピードで、本数間の休憩を取り、複数回繰り返す練習のことです。陸上中級~上級者の方では,3000m+2000m+1000m(通称さんにーいち)でよくなじみがあるのではないでしょうか?
- レペティショントレーニング:完全な休憩を挟みながら繰り返す練習
- インターバルトレーニング:不完全な休憩を挟みながら繰り返す練習
私の理解では、レペティショントレーニングとインターバルトレーニングは、上記の区別がある理解でしたが、書籍を読むと、間に不完全な休憩を挟みながら行う練習もレペティショントレーニングとして扱われております。タイムを上げること自体が、陸上長距離走に取り組む方の目的だと思いますので、定義の区別について深入りしないことにします。
レペティショントレーニングの効果
ダニエルズフォーミュラによるとレペティショントレーニングの効果は
- 無酸素性作業能を高める
- ランニングの経済性を高める
と記載があります。(書籍では無酸素性作業能、スピード、ランニングの経済性を高めるという記載になっております。スピードと無酸素性作業能は同じ意味合いだと思いますので無酸素性作業能でひとくくりにしております。)
無酸素性作業能を高める
無酸素性作業能とは、ATP-CP系と解凍系を使用するATPの生成能力のことを指しております。ATP-CP系のATP生成の寄与は長距離走では小さいので、ここでは解凍系について詳細解説します。ATPやその役割について以下の記事で取り上げておりますので、参考にしてみてください。
解凍系のATP合成(無酸素過程)
解凍系のATP合成は、筋肉内のグルコースの化学反応が進行することで発生いたします。
最終的な化学反応式は次の式になります。
グルコース + 2 ADP + 2 Pi + 2 NAD+ → 2 ピルビン酸 + 2 ATP + 2 NADH2+ + 2 H2O
です。この反応式をみるとグルコースからピルビン酸という物質が出来上がるときに、ATPが生成されますね。(補足:ATPは水と反応するときにエネルギーを生成します。)ランナーが意識することは、どうしたら無酸素性作業能をレペティションによって最大限に上げれられるか(=ATPの生成能力をあげられるか?)になるかと思います。それは設定ペースと休息によって制御します。
レペティションの練習例
レペティショントレーニングで設定すべきペースは、VDOT Calcというアプリを使うと求められます。こちらのアプリを使用して直近のレースペースを入力して、トレーニング欄に記載されたRepetitionの設定ペースを確認します。この設定ペースは、およそ1500m走を全力で走った時のペースに該当します。次にレストの時間ですが、疾走時間の2~3倍でおこなうのが、好ましいという旨がダニエルズフォーミュラに記載されております。練習例としてはこんな感じです。
- (400m + 400mjog) x 6
- (200m + 200mjog)x10
- (600m + 600mjog) x 3
疾走時間と同程度の距離をジョグでつなぐとおよそ疾走時間の2~3倍になると思います。400m、72秒ペースであればレストのジョグは2分24秒~3分36秒ということになります。(6’00/km~9’00/km)
ランニングの経済性を高める
ランニングの経済性(ランニングエコノミー)とは,最大化強度のランニングにおけるエネルギー消費量(酸素消費量の少なさ)を指しております。最大化強度というのは、最大酸素摂取量時を指しております。要するに、これ以上酸素を取り込めない状態のランニングにおいて、どれだけ酸素を節約しながら走ることができているかという指標です。如何に少ない酸素で走る速度を維持することが出来るのか?考えていこうという観点になります。
レペティショントレーニングの効果を上げるために
レペティショントレーニングの効果を上げるためには、どうすればよいのでしょうか?実施時期などの前提について記載していきたいと思います。
実施時期
ダニエルズフォーミュラの中では、練習が4つの時期に区分されております。レペティショントレーニングは第二段階に位置付けられております。
- 第Ⅰフェーズ(Eペースによる基礎構築フェーズ)
- 第Ⅱフェーズ(質を重視した、最初のフェーズ。導入期)
- 第Ⅲフェーズ(インターバルトレーニングを重視した鍛錬期)
- 第Ⅳフェーズ(質を重視した最終段階でパフォーマンスをピークに持っていく時期)
第Ⅱフェーズは第Ⅰフェーズからの移行になるため、第一フェーズで得られた効果を得た身体状態であるかどうかが判断のポイントになるかと思います。第一フェーズで得られる効果とは、すなわちEペースを中心とした練習効果ということになります。Eペースの主な効果は以下4つになります。
- ケガに対する耐性を作る。
- 心筋を強化する
- 血液の酸素運搬能を改善する
- 筋繊維をランニングに有利な性質に導く
ケガに対する耐性や酸素運搬能力がジョグなどの有酸素運動で基礎固めできている状態から導入することに意味があるようです。
ランニングフォーム改善
レペティションの効果の一つにランニングの経済性がありました。ランニングの経済性をどのようにしたら最大化できるのか?が論点になります。ランニングの経済性(どれだけ酸素を節約しながら走ることができているか)について、代表的な決定因子を見ていきます。
- ランニングフォーム
- 性別
- 環境
ランニングの経済性は実は、男女によって差があったり(おおきな差ではない)、環境(走る場所(高地なのか低地なのかなど))によって差があったりするのですが、これらの決定因子は、制御できない部分になりますので考察する必要はありません。考えるべきは、ランニングフォームをレペティショントレーニングによってどのように最大限向上させるか?ということです。ランニングフォームを向上させるために、上半身の位置、接地する時間が影響するため、以下の点に留意しながらレペティショントレーニングを行いましょう。
- 練習のレストを調整する。
- 1分間あたり180回程度のピッチを目指す。
- 接地時の足の置き方
練習のレストを調整する
レペティショントレーニングによって、ランニングフォーム技術を向上させることが狙いですので、走っていていっぱいいっぱいになるようなメニューの組み方は避けましょう。例えば(400m + 400mjog) x 6を行う際に4セット目できつくなってきたら一度やめて(400m + 400mjog) x 4に修正して、10分程度休んでから再度(400m + 400mjog) x 4を取り組むなど臨機応変に対応しましょう。あくまでもレペティショントレーニングの目的は、ランニングの経済性上げる、無酸素性作業能を上げることですので、いっぱいいっぱいになってランニングフォームが乱れては本末転倒になります。
1分間あたり180回程度のピッチを目指す。
皆さんは1分間の自身のピッチの回数を把握されておりますでしょうか?私はジョギングするときは160~165程度で、レペティションでようやく180回程度になります。個人差あると思いますが、ピッチが1分間に180程度はなかなか速いと思います。1分間に180程度を推奨する理由は、一回の着地あたりの衝撃を低くするためです。ただピッチは高いに越したことはないですが、動きに無理がでるようなら、ケガのもとにもなりかねないので、無理してあげる必要もないかと思います。ピッチの回数は、Garminなどのランニング用の時計があれば、計測することができます。ピッチを測るだけでなく、心拍数を測ったり、GBS機能をつかってトラックではない場所の決められで一定の距離を走ることが出来るように、1着持っていてもよいかもしれませんね。
接地時の足の置き方
足の置き方は前に置くのではなく、腰の真下に接地することを心掛けましょう。前に置こうとすると、接地した時にブレーキがかかるだけでなく、引きつけてから足が地面から離れるまでの時間も長くなるため、こちらはぜひ意識してみてください。
本記事は以上になります。最大限の効果を求めて練習に取り組んでいきましょう。
——————–参考文献(URL含む)———————
「最大無酸素性作業能力の向上に関連する
分子メカニズムの解明
-骨格筋発現タンパクの網羅的」
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/db/seeds/des36_12.pdf
・「ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版」
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