市民ランナーの間の会話で、よく耳にする”ランニングエコノミー”と”Vdot”。特に”ランニングエコノミー”に関しては、フォームのきれいさでしょ?という方もいるのではないでしょうか?この記事では、ラニングエコノミーやVdotについて、ダニエルズフォーミュラに記載のある内容を中心にまとめ、そもそもランニングエコノミーとは何なのか?Vdotとは何なのか?について詳細に解説していきたいと思います。
Vdotとは?
皆さんは、Vdotをご存じでしょうか?おそらく何となく聞いたことがあるよという方も多いのではないでしょうか?Vdotとは,ブイドットと読みますが,体重1kg,1分間当たりの最大酸素摂取量であるという記載が多いです。(VdotO2maxの略語)ここで皆さん疑問に思わないでしょうか?「酸素摂取量」という言葉は果たして吸いこんだ酸素の量という意味なのか、吸いこんだ酸素がどのくらいの量、体内に取り込まれたかという意味なのか?どちらなのか?と。酸素摂取量とは後者(吸いこんだ酸素がどのくらいの量、体内に取り込まれたか)として使用されております。ただし、人間は、体内に酸素を蓄えておくことが出来ないので、摂取量と消費量は以後ほぼ同義として扱います。
ランニングエコノミーとは?
続いてランニングエコノミーについてみていきましょう。ランニングエコノミーとは、ある速度における酸素摂取量の多さ少なさからランニングの経済性を把握するための指標です。ランニングエコノミーが高い人というのは、少ない酸素消費量(摂取量)で疾走を続けられる方ということになります。
ランニングエコノミーというのは、単純にフォームの良し悪しで決まると思っている方も多いと思いますが、実はそんなに単純な話ではなく、正確に把握するのが難しい複合的な要素です。複合的な要素とは、たとえば以下のような要因が含まれます。(参考文献
Running economy: measurement, norms, and
determining factors)
- 代謝効率(Metabolic efficiency)
- 心肺効率(cardiopulmonary efficiency)
- 生体力学(biomechanical)
- 神経筋特性(Neuromuscular characteristics)
代謝効率とはエネルギーの利用のしやすさ、心配効率とはどれだけ酸素の輸送と利用の際の過程においてかかるエネルギーを減少させることができたか、生体力学と神経筋特性とは、神経と筋骨格の相互作用等を指しております。神経と筋骨格の相互作用というのが、一般的に理解されているランニングフォームを指しているのでしょう。ランニングフォームの改善をするレペティショントレーニングの行い方については,【2023年度版中級者必見!】レペティショントレーニングの効果の最大化にて紹介してますのでこちらの記事も参照していただければと思います。
このようにランニングエコノミーは、ランニングのフォームだけに限らない指標となります。
Vdotとランニングエコノミーをイメージしよう
ではVdotとランニングエコノミーをイメージできるように次の図を使って考えてみましょう。次の図をみてください。次の図は最大酸素摂取量が同じ2人のランナーにおける、ランニング速度と、酸素摂取量(Vdot)の関係が記載されております。
縦軸がランニングエコノミー、要は酸素の摂取量です。横軸は速度(時速)です。二人のランナーはどちらがランニングエコノミーが優れているランナーでしょうか?答えはランナーBです。ランニングエコノミーというのは、ランニングの経済性を把握するための指標でしたね。もし二人が同じ速度で走っていたなら、より酸素の消費量(摂取量)が小さいランナーのほうが、ランニングエコノミーに優れているといえます。以下の図をみてください。先ほどの図に説明を加えた図です。
横軸が20.7あたりにランナーAのデータから垂直に線がおろされています。この線は、ランナーAとランナーBが、同じ速度(時速20.7km)で走っていることを意味する線ですが、赤線②で記載させていただいたように、酸素摂取量(消費量)に差があることが分かります。ランナーBのほうが、同じ速度で走っている時に消費している酸素量が小さいことから、ランナーBのほうがランニングエコノミーが優れているという言えます。それぞれのランナーは速度が上がっていくと酸素摂取量も比例してあがっていきますが、最高点がVdotです。2人ともVdotは70のランナーとなります。ランニングエコノミーに関しては、トレーニングを積むとグラフが、同じ傾きのまま下に平行移動したようなグラフになっていくイメージになるかと思います。
ランニングエコノミーとVdotは独立した変数である。
よく書籍や会話の中でランニングエコノミーが高い人はVdotが低いというような発言を耳にします。このような発言を耳にするとランニングエコノミーとVdotは、あたかも依存している理解なのではないかという印象を受けてしまいます。しかしランニングエコノミーとVdotは、ランニングのパフォーマンスを考えるにあたっては独立した変数になります。これは道のり、速さ、時間の関係に似ています。道のり は 速さ * 時間で求めることが出来ますね。注目したいことは、速さと時間はあくまで道のりに対して、独立な2つの要素であるということです。独立な2つの要素とは、時間の経過に対して、速さが変化したりしない( 速さ一定という前提)という意味です。あるいは速さが大きいときは、経過時間が短いというような依存関係がないという意味になります。ランニングエコノミーの話に戻すと、ランニングのパフォーマンスはVdotとランニングエコノミーを独立な2つの要素として持つのであって、Vdotが上がればランニングエコノミーが下がるというような関係性にあるわけではないということです。
- 道のり→ランニングのパフォーマンス
- 速さ→最大酸素摂取量
- 時間→ランニングエコノミー
ちょっと専門的な話になりましたが、以下がでしたでしょうか?ラニングエコノミーやVdotがどういうものかイメージできたのではないでしょうか?ランニングエコノミーは、非常に複雑なものですので、私のほうでも論文読んでまた分かったことを執筆していきたいと思います。
参考文献「ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版」
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